土地本位制

我が国は、いくつもの成長や不況を経て、トップクラスの経済力を持つに至った。その日本の地価が、これほど単調な動きを示していることに、驚く人もあるだろう。この富士山のようなカーブには、2つの大きな特徴がある。1つは、なぜ平成3年まで1貫して上昇し、1度も下がっていないのかということ。

もう1つは、平成3年のピークからなぜ8年間も下がり続けているのかという、その長期下落という期間に対する疑問である。実はイギリスやアメリカなど他の先進国にも、バブルとその崩壊はあった。しかし、その後の処理は迅速で、地価回復までもっと短期間で終焉している。この2つの大きな謎に答えてこそ、日本の地価が今後回復するためのシナリオのヒントがある。

単純に言えば、富士山カーブのうち上昇カーブは、地価は下がらないという土地神話や、それを前提条件とした社会全体の土地本位制によってもたらされた。このことは、既に常識となっていると思われるので、詳しくは述べないが、ずっと経済成長が続き、転売益を見込めている間は1貫して上昇するということに対して、誰も疑いをはさむことがなかった。

人々は土地をもとに人生設計し、銀行は土地を尺度として融資を行い、企業は土地をベースにして設備投資計画を作った。これが我が国の「土地本位制」だった。対する、下落カーブは、地価は下がらないという土地神話の崩壊を表わしている。この下落カーブの急勾配と長さが示しているものは、不動産に対する信用の急激な収縮、不信感の巨大化であり、土地本位制というメカニズムへの深刻な打撃を示している。

土地本位制下では、不助産とは、保有さえしていれば、多かれ少なかれ必ず利益を得られるという前提があった。また、流動性が本来低いはずの不動産が、我が国に限っては、常に供給不足気味という売り手市場であったがために、流動性にも問題がない極めて有利な財であった。

よってその人気は高く、資産としても、担保としても信用が厚く、不動産は格段の扱いを受けて事実、住宅地は名目GDP、賃金指数、物価指数の全ての上昇カーブをはるかに上回る有利な財であった。商業地も、名目GDPこそこの数年問で下回ったものの、他の指標よりも優位に伸びていることがみてとれる。

これほど安全・有利ととらえられていた財が今はその信用が根本から失われている。崩れる前の市場を支えた前提は、1言で言えば「土地は最も有利な財で、キャピタルゲインは将来常に見込め、保有しやすく、保有するのが最もかしこい財である」という経済認識だった。


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